いちめんのひまわり        

 

写・文 Kyoko Murakami  No.3

プロバンスはのんびりとした田舎で、行き交う人もいない。ただ続く白い道と、ゴッホの描いた

ひまわり畑。ひまわりは一日の太陽の動きを追って花の向きを変える。  

 

 

 

暫し暦を忘れていたらいつのまに

七月に入っていました。

 

 

 

ラベンダー畑の向こうにセナンク修道院

 

 

 

修道院庭には、ペットは外で待つ、

ブラジャーと短パンNG、の注意書き

 

 

 

 

 

 

 

 

タイルの模細工で書かれたアビニヨンの

高台から観た360度の円の景色の羅針盤

 

 

 

 

 

 

この地にいると14世紀からの建物も普通なのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達が泊まっている村は画家セザンヌの生まれた所と知った。     

セザンヌの絵は知っていたけれど、予備知識を持たずに突然訪れたので

強い太陽、天に向かい延びる杉の木、一面のひまわりを見てゴッホの絵みたい! と思った直後に

通った村で、そこはゴッホが生涯を終えた土地、と知ってびっくり!  

サンレミと言う、静かな村の朝市に通りかかると、沢山の絵を売っていて伊織がセザンヌの画集を買ってくれた。

いまもこの景色と同じ セザンヌの画集

画集に描かれた風景と、今の景色がほとんど同じ。東京なんて三年で景色がすっかり変わってしまうのに。

朝市には露店がズラリと並び、プロバンス小紋の美しい色の木綿、レースを売る店、

ラベンダーのポプリ、花の粒を量り売りする店、オリーブやワインの、レンガ型の素朴な石鹸を売る店、

ああおかぁの好きな匂いばかり‥パセリ、セージ、ローズマリー、タイム‥

‘スカボローフェアー’と言う曲の歌詞に出て来るハーブの名の並び順、思いだした。

乾いたハーブや天然素材の石鹸の匂い、朝もや立ちこめる朝市で、

突然聞こえた生の楽器の音。 南米の山のサウンドに似た、もの哀しくて美しいハーモニー、

原住民の出で立ちのストリートミュージシャンのライブだ。

映画で観るアメリカインディアンの様な立派な羽根を頭にかむり、ビーズ刺繍のある皮の服にモカシンを履き、

小柄で浅黒い顔はペルーのインディオの様。 サウンドもペルーの音楽に似ている。

家族中で各地を放浪しているのか、同じインディオの服装の子供達が

回りで犬と遊んでいる。 白人ばかりの朝の景色の中で不思議に美しい絵になっている。

アビニヨンの街まで行って、駅の近くにとても小さなレコード屋さんを見つけた。

ジャズのCDが充実しているのでびっくり。ペトロ・チアーノのピアノスコアをおとぅへお土産に買う。

歌に唄われているアビニヨンの橋は、昔の川幅のまま。橋は途中で切れた様に見える。

絵の具のふか緑色の水も止まっている様。

アビニヨンの橋

ローマ法王が14世紀1309年に移り住んだ宮殿内の教会、セント・マリーの、

フレスコ画が描かれた天井、ローソクのススでくすんだ壁画が、ぼうっと浮かぶ御堂内の静けさ。

高台から観たアビニヨンの街も中世そのままの佇まい。

ここに来て白人の観光客に初めて出会う。

なんにもない大平原の中にも、小さな村にもどこにでも、教会だけは必ずある。

壁に手を当てると700年を越えた人々の祈りの重みが伝わって来る様な気がする。

教会前の広場で演奏していた、アコーディオンとウッドベースのDuoが、

次から次へとスタンダードジャズを演奏している。 その凄いテクニック!

なんだなんだなんだ! こいつらは! うま過ぎ!  アメリカより全然スタンダードジャズが

流通しているんだ、フランスには。 でも人が集まるほど観光客はいない。

St.Marie’s Church

地平線までひまわり…と言う広大なひまわり畑の所まで走ってから、

写真を撮ろうとして、カメラを教会付近に置き忘れて来たらしい事に気づく。 

まぁいいか、明日取りに行こう。04.7月.某日

翌日、カメラはちゃんとあった。 教会の前のお土産屋さんに。

外国で紛失した物が出て来るなんて事は珍しい事なのに、なぜか私は信じていた。

絶対、なくなる事はない、と。 さぁ、カメラを持って地中海めざして一路、平原を走る。

地平線までのひまわり畑。 お日様に向かって花は全員こちらを向いて整列している。

映画でしか見た事のない、360度の円を描く地平線が見える広大な景色の中に、

初めておかぁが立った日の思い出は、忘れられない長男の大学卒業式出席のために、

イギリスはヨークシャーに初めて行った数年前の六月。

イギリスの六月の田園風景は、羊が地平線まで飼い放たれてなんとも牧歌的だった。

勉強したい大学を勝手に見つけ、ひとりで飛び発った伊織。あれから何年たったのだろ。

飛行機が飛び立つ時、送迎展望台で、「おにぃちゃーん!」と、

泣きながら飛行機を追って走った小学生の、桂くんの泣き顔を思い出す。

  今日見た地平線までひまわり、の景色も忘れられない景色としておかぁの心に刻まれた。 

 

 ゴッホの絵ハガキやパンフレット

 

 

 

 

 

 

アビニヨンの裏町のCDショッ

 

 

 

 

古い修道院の御堂内はひんやりする

 

 

 

 

 

 

 

St.Marie's 御堂内の灯

 

 

 

 

 

 

 

 

       

 

 

 

海に出る道を探して横町を歩く 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏の初地中海! いきなり短パンのおかぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お土産こんな乾燥ハーブを買う。

サラダや料理に使う。

東京を発った時六月だったけれどいつのまにか、七月に入った事に気づいた。

       どの位走っただろう、景色はだんだん海岸線ぽくなって来て

スペイン風の白い家が建ち並ぶ海の街に入る。 

  車を止めて汐の匂いのする方に歩きつつ、白い四角い家々の横町を入る。

         横町、とひと口で言っても、地中海付近の横町は南欧の色そのもの。

青と白の街。夏だと言うのに人影もあまりない。熱い太陽にクールな景色が広がっている。

それでも海岸際の海の家は美しく店開きをしている。

細い路地を抜けるといきなり目の前に地中海が広がった!

どこの店も、海の家と思えないカラフルなテーブルクロスとテーブルナフキンで

来客に備えてテーブルをセットアップ。イタリアに行った時も観光地ではない裏道の横町の

どんな小さな食べ物屋でも必ず、美しい色のテーブルクロスとナフキンが

色どりを考えてセットされていてお客が入れ替わる度に、

糊のきいた新しいテーブルクロスに変えるのを見た。

日本の店との文化の違いを感じたけれど、こんな海の家でもそのテーブルセッティングが

なんともセンスが良く、日本の海の家との差に驚く。

それからここでも鉢植えのゼラニウムの花達。

        

海の家のテーブルセッティング!                 海岸通りの洋品店

青い空と青い海、白い家。そしてカラフルな花とカラフルなテーブルクロス。

小さな土産物屋さんの、スペイン風絵柄のタイルの壁に、

デキシーランドジャズコンサートのポスターを見つけた。

可愛いテーブルと可愛い椅子。そこにひと筋の夕日が当たって

なんとも言えずいいい絵になっている。

 

海岸通り裏土産物店のテラスにて・教会で汲んだ貴重な湧き水を入れたペットポトル

夕方の光りに照らされた土産もの屋で、可愛いガラスのポットに入った、

地中海の塩と、ハーブが漬け似られているオリーブオイルを買う。

最近、美味しいお塩に凝っていて、料理に使う塩が美味しいと、

料理も美味しくなる事に気がついて

焼き魚の時と、西洋料理の時と、塩を使い分けているわたし。

歩き疲れて、土産物横町のテラスでコーヒーにケーキ。

こちらに来てから、水の貴重さを実感。

ノートルダム・ド・ビーで汲んだ教会の庭の湧き水をペットボトルに入れて

持ち歩いていたけれど、この水は世紀を超えて枯れずに来た泉の湧き水、とかで

「ルルドの水」の様に有り難く、また美味しい。

とにかくどこに行っても、店の一軒も見かけない様な平原の中ばかりをドライブしている旅だから、

ここでのコーヒーにケーキは嬉しい。

海岸の裏通り商店街では、チラホラと北フランスやイタリーからの観光客らしき人に出会う。

夕方になってもまだまだプロバンスの夏は暮れない。

帰り道、高台にそびえる城壁をここでも見つけた。

その城壁の方へ登って行くと、やはり城壁の中は古い村になっている。

遙か下の道からそびえ立つ城壁。壁の中の村。壁の外に地平線がかすむ。

小さな雑貨屋などで売っているグッズがめちゃくちゃ可愛いセンスの良いグッズなのです!            

 

 

 

地中海近くの街に入ると景色が変わる

 

 

 

 

 

 

 

 

テラスには必ずゼラニウムが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海岸にも教会がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一日で何キロを走っただろう。あーぁ疲れた

 

 

 

 

 

 

ほらこんな平原の城壁内にも教会が

 

↑総合掲示板

   中世期からそのまま取り残された様な、城壁内の古く四角い石の家の中は、

どこも皆、暖かい色遣いでシックにカラフルな装いの土産物屋やレストランになっている。

ここでも、ほんの数人の年老いた白人観光客に出会う。

       

城壁内にひっそりと残る古い家並み。        セザンヌの絵と今も同じ風景        

売っている物も、素晴らしくお洒落な手書きのカードやハーブのリースやポプリなど。

しかもこんな所で作られている物が、同じ位の値段で東京のお洒落なお店でも買える。

東京で買ったポプリに、ここのお店のマークがついていたんだ。

今の東京の流通網たるや、凄い!   

さて、ここでワインレッドのテーブルセッティングをしているレストランを見つけて

ディナーにありつける事になった。

毎日あちこち遅くまで飛び歩いて、夕食の時間に間に合わず、

せっかくのフランスに来ても、まだレストランなどで夕食をしていない。

メニューを眺め、ここはやはり魚だな、いさきのプロバンス風バターソースと。

日本で食べるフレンチの三倍の大きさの、いさきの切り身は三切れ。

そこにバジルのバターソースがトロリとかかり、

付け合わせのトマトは中に肉詰め、オーブンで焼いてパセリも焦げるマヨネーズかけ、

フライドライスが添えてある。

うーんすごいボリューム! 野菜の煮込みのスープだけでお腹いっぱい。

ホントに不思議なのは、こんなに人がいない山奥の村に、いきなり古式ゆかしい

格調高そな、金のドアノブのレストランがポツンとある事だ。

人がほとんどいない村でも、とにかく店が古くて、しかも間違いなくセンスが良い。

外から見ると風化した石の家なのに、中は水回り含め文化的でLAN対応のデジタル化。

その上、木とレンガとレースと花が、ランプの灯りで夜を演出する。

外に出るとやっと夜の帳が降りて静けさの山頂の村に、

あかりが灯りフランスの旗がひらめいていた。  

 石の家の外に出ると青い夜になっていた。 

自然な景観を壊さない様に、文明のリキATMや電話BOXは城壁をくり抜いて

 

 

 

 

 

 

 

 

いさきのバジル、バターソースのお皿、でか!

 

 

 

 

夕食終えて10:00やっと暗くなった。

 

 

 

  By Kyoko.M : Shiny's Office Inc.